1979年、中学卒業と同時に渡欧。ウィーンでピアノを代表する名教師ブルーノ・ザイドルホ ーファー及チェコ出身のピアニストブランコ・チュベルカに師事。 その後、指揮をオーストリア国音楽総監督クルト・ヴェスに師事。1982年よりミュンヘン、 マインツで巨匠セルジュ・チェリビダッケに、バイロイト音楽祭で巨匠ホルスト・シュタインに 師事。1986年よりケルン放送交響楽団他で、マーラー演奏の大家で知られた巨匠ガリー・ベル ティーニのもと、さらに研鑽を積む。同時に巨匠レナード・バーンスタインにも師事。ブラジル の巨匠イサーク・カラブチェフスキー及び小澤征爾のアシスタントを務めたこともある。 「私は大きな才能に出会いました。彼が今後重要なキャリアを築き上げていくことを確信してい ます。」 イサーク・カラブチェフスキー(1991年10月30日)
1992年、チェコ国⽴ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団定期演奏会でバーバーの管弦楽のた めのためのエッセイ第2番、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番(共演は台湾のピアニスト、ル ェイビン・チェン)、プロコフィエフの交響曲第5番を指揮して正式デビュー。同時に、同オー ケストラとチャイコフスキーの交響曲第5番、スラヴ⾏進曲を録音、CDデビューも果たす。以 後、チェコ、ポーランド、旧ソ連等を中心に活躍、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団とは フジテレビのために交響組曲「北の国から」のCDを録音、またチェコナショナル交響楽団を指 揮してピアニスト舘野泉ともにグリーグ、ラフマニノフの第2番、ブラームスの第1番のピアノ 協奏曲のCDをリリース。 現在まで、ラフマニノフの録音は古今の同曲のベストレコーディングのひとつと高い評価を得て いる。
「彼はまだ30代のはずだが、最近のチェリビダッケのようなスケールの大きい、そして透明で 緻密な響きには感心した。・・・・・平林直哉(1996年6月、CDジャーナル)」
ウィーンでアルメニアの作曲家、指揮者の巨匠ロリス・チェクナヴォリアンと知り合いになった ことがきっかけとなり、1993年、アルメニア・フィルハーモニー管弦楽団を指揮、朝⽇、⽇経 新聞紙上で大きな話題となった。以来2000年まで客演指揮者を務めることとなった。 2000年4⽉、井上の尽⼒により同オケは⽇本政府の無償資⾦協⼒を得て楽器等を⼀新、同年 9⽉にはそれらの楽器の披露も兼ねて、井上⾃身のプロデュース、国際交流基⾦の助成によりア ルメニアの首都、エレヴァンで「⽇本音楽週間」が実現した。この模様は朝⽇新聞紙上で大きく 取り上げられた。 2001年から2003年までアルメニア国⽴放送交響楽団音楽監督・首席指揮者。
「しっかりとした低音の上に和音が積み重なったドイツの音。しかもディテールは明瞭で、⽴体 感がある。音楽の進⾏は慌てず騒がず・・・クレンペラーを連想したほどだ。 ・・・・・許光俊(1998年2月、モーストリークラシック)」 「⽇本のアマ・オケをウィーン・フィルに⼀定期間変身させる。特に美しいポリフォニーを引き 出すことにかけてはライバルを⾒つけるのは困難なほどだ。 ・・・・・鈴⽊敦史(2000年11月、グラモフォン・ジャパン)」
「イノウエは素晴らしく音楽的な⽿と知識を持つ優秀な音楽家です。彼はこれまで様々な演奏会 で指揮をしてきましたが、その仕事ぶりは非常に優れたものでした。アルメニア・フィルとの演 奏会の録音が彼の能⼒を証明しています。 ・・・・ガリー・ベルティーニ(2002年11月)」
2001年、マーラーの交響曲全曲を演奏することを目的に、ウィーン国際マーラー協会からの 承認を得て、アマチュア・オーケストラ、ジャパン・グスタフ・マーラー・オーケストラ(現マーラー祝祭オーケストラ)を設⽴、 音楽監督に就任。常にマーラー協会からの新しい研究成果を共有し、演奏に反映しており、その 演奏は大きな反響を得ている。
「彼らの第6番の演奏は、真に注目すべきものであり、これほどまで異⽂化を消化し、表現して いることに驚きを禁じ得ません。 ・・・・・ラインホルド・クビック、ウィーン国際マーラー協会副会⻑ (2002年10月2日)」
2003年には国内外で活躍する⽇本のトップクラスの音楽家たちとジャパン・シンフォニアを 創設し音楽監督に就任。 ジャパンシンフォニアの演奏会は常に音楽関係者、音楽ファンから高 い評価を得ていて、⽇本にこのようなヨーロッパ的響きのオーケストラが他にあるだろうかと絶 賛されている。
2012年からモンゴル国⽴音楽舞踏大学客員教授また⽇本アルメニア協会理事(会⻑︓前ソ連 全権大使、枝村純郎)。 2012年10⽉にはモンゴル国の首都ウランバートルでピアニスト・舘野泉、モンゴル国⽴フィ ルと「⽇本・モンゴル修好40周年記念演奏会」(在モンゴル⽇本大使館主催)を指揮。 2013年1⽉からモンゴル国⽴フィルハーモニー管弦楽団常任客演指揮者に就任。
2016年2月には川崎市、ミューザ川崎シンフォニーホール共催でマーラー交響曲第8番「千人の交響曲」をマーラー祝祭オーケストラと演奏。日本におけるマーラー演奏史の重要かつ歴史的な公演と絶賛された。これにより長年をかけて行ってきた同オーケストラとのマーラー全曲サイクルは完結した。
2016年5月にはアルメニア国立フィルの客演指揮者に復帰。2016年10月にはエルサレム交響楽団の日本公演を指揮。
現在、マーラー祝祭オーケストラ、ジャパン・シンフォニア音楽監督、ペガサス・オーケストラ(ニューヨーク)ミュージックアドヴァイザー。